お寺の漫画図書館スタッフの酒井正空です。このコーナーでは漫画図書館の蔵書を紹介していきます。
今回取り上げるのは仏教コミックスシリーズの『家庭のお経〈維摩経と勝鬘経〉』です。このマンガはタイトルにもあるように『維摩経』と『勝鬘経』に基づいて描かれています。『維摩経』はお釈迦様の在家信者でありながら、菩薩や十大弟子を凌ぐほど仏教に精通した維摩居士(ゆいまこじ)が主人公となって説かれたお経です。
『維摩経』の序分(経の最初)では宝積菩薩の問いに答えるお釈迦様の説法が中心となって展開されます。このマンガでもまず宝積菩薩が「世尊よ、きょうはわたしたちのためにほとけの国(仏国土)について教えを説いていただきたいのです。ほとけの国があるのならそれを美しく飾りたいと願っております。」とお釈迦様に懇願する場面が描かれています。お釈迦様は宝積菩薩に「若者たちよ!ほとけの国を美しく清らかに飾るにはあなたがたひとりひとりの心を清くすることです。つまりほとけの国の清らかさとは最高の真理に到達しようと願う菩薩の心が清いかどうかによってきまるものなのです。」(有名な「心浄きに随って仏土浄し」の一節)と答えます。
つまりお釈迦様はこの世界の清らかさを見るには真実のほとけの国を見る目(最高の真理に到達しようと願う菩薩の心)を育てる必要があるとおっしゃっています。そのためにはやはりお釈迦様への「信」が大切であると思います。仏教の「信」は「真実として受けとめる」という意味を持っており、すなわち「澄浄・清浄・歓喜・浄信」であり、また「浄らかな心持ちとなる、また非常に喜ばしい気持ちとなる」ことであります。私もお釈迦様の教えを真実として受けとめ、その教え通りに歩んでいけるよう常に願いを持っていたいと思います。