この記事の目次
「今月の仏教漫画」は、
特別企画として「お寺の漫画図書館」×大正大学の授業 (文化の探究 ー身近な仏教を知る) コラボレーションを紹介いたします。今月の仏教漫画は、第Ⅱ弾『寺ガール』です。
(前回 第Ⅰ弾 『鬼灯の冷徹』の紹介は、こちらから~ http://mangatosyokan.com/2017/04/22/4568 )
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(https://www.amazon.co.jp/寺ガール-りぼんマスコットコミックス…水沢…/4088671678)
【作品情報】
作者:水沢めぐみ
作品名:『寺ガール』
出版社:集英社
既刊:全3巻
掲載雑誌:月刊『Cookie』
『お寺×少女漫画!』主人公、光里が寺ガールなわけ。それはお寺で生まれ育ったから。お寺ラブな光里が仏様ではなく人間の男の子に恋をした!けれどその恋は絶対に叶わない恋で……。はじめて寺に生まれたことに悩む光里。果たして恋の行方は……?ベテラン少女漫画家が描くハートフル仏教恋愛マンガ!(表現文化学科/S.Y)
【作品概要・あらすじ】
物語の主人公は、福福寺に住む3人姉妹。長女の悟留は医者を目指す医大生。悟留は長女なのだから寺を継がなければいけないという運命に抗うように、医者を目指すことを決めていた。「お寺が嫌いなわけじゃない。けれど決められた人生はつまらない」。後継ぎ息子がいないお寺の長女という立場が、恋愛の面でも重荷になっていた。
次女の光里はお寺が大好き。毎日のおつとめも欠かさない、生粋の寺ガールだ。優しく元気な性格の光里は、まさに光のように、家族や周囲を明るく照らしている。誰もが光里は福福寺を継ぐ存在だ。そう思っていた時、光里が思いもよらない恋をする。相手はお釈迦様のような?転校生、大倉諒。しかし彼には光里が好きなってはいけない事情があった。難しいとわかっていても、大倉に惹かれてしまう光里。そんな光里を応援しつつ、寺の後継ぎとして心配する周囲。光里は恋をしたことで、はじめてお寺に生まれたことを悩み始める。
三女の拝美は天真爛漫なイマドキの女子高生。家がお寺だと知られたくないという思いで、通学に1時間半もかかる高校に通っている。「お彼岸だからって彼氏とデートにいけないなんて」大好きな家族を裏切る罪悪感を持ちながら、葛藤する拝美。
寺ガールたちに恋は難しいのか?三姉妹の恋模様を描くストーリー。(表現文化学科/S.Y)
【レビュー】
代表作に『ポニーテール白書』や『姫ちゃんのリボン』があり、集英社の少女漫画誌『りぼん』の全盛期を代表する作家の一人として知られる水沢めぐみ。『キラキラ100%』という王道少女漫画の連載を終えた彼女の次回作は、なんとお寺を舞台にした物語だった。当時の担当編集者の「次は寺まんがやりませんか」という提案に、それまでお寺や仏教文化に関心のなかった水沢は当初、素直に受け入れることができなかったという。しかし、次第にその考え方も変わり「やってみるのもいいかも」と描くことを決めた。連載が決まり、すぐに都内の寺院に取材しに訪れた水沢はすっかりお寺の魅力に魅了され、後にはプライベートで山奥の寺院に三泊四日の修行体験をもしに行った。
本作は、仏教漫画にありがちな密な仏教学はほとんど描かれていない。そのため、仏教に精通する読者は物足りなく感じるかもしれないが、仏教知識のない人の入門書としては最適かと思う。また、仏教漫画というよりは少女漫画としての色が強いため、若年層の女性に仏教への興味関心を持ってもらう期待ができるだろう。(表現文化学科/K.M)
【仏教的描写】
◎仏教の歴史や仏の教えなどは詳しく描写されていないが、主人公の光里たちがお手伝いとして参加する仏教行事が度々登場する。特にお彼岸の話は「同級生は学校が休みになるラッキーな日なのに」という三女の拝美の言葉にあるように、一般の人との認識の差が出ていて面白かった。私含め、多くの日本人は春分の日や秋分の日は暦上の休日としか認識していないのではないだろうか。仏教との関わりが深いことを、この漫画を通して知ることができた。ほかにも、大晦日や、盆踊りなど仏事の日をキーポイントにストーリーが進む。
4月8日のお釈迦様の誕生日を祝う灌仏会は細かく描写されていた。花で飾ったお堂の中にある誕生日仏に甘茶をかけてお祝いをする。華やかなシーンに描かれていて、初めて灌仏会を知る読者にも興味を抱かせるような美しい場面だと思った。(表現文化学科/S.Y)
◎《寺の跡継ぎ問題》
主人公たちは三姉妹のため、誰かが僧を婿にとって寺の跡を継がなければならない。物語では、彼女らが恋愛をする際の鍵となって進行する。婿をとる方法以外にも、一般の人が得度してお寺に入ることも可能という描写がある。
《お寺は住職家族のものではない》
寺は正確には住んでいる住職家族のものではなく借りて住ませてもらっていることになるため、現住職がその役から退くことになった場合、家族は早急に出ていかなければはならない。(表現文化学科/K.M)
【感想】
◎お寺に生まれることで、跡継ぎ問題が絡み自由な恋愛ができないのはとても辛いことだと思った。三巻の巻末に、作者が牧師の方に取材した内容が掲載されていた。「もし自分の息子がお寺の娘と付き合うと知ったらどうしますか」という質問に対しての牧師の回答は、「つきあうだけならいいが、結婚は無理だと話す」だった。やはり、現実は厳しいと悲しくなった(最終的には「本人に任せる」と言ったそうだが……)。(表現文化学科/K.M)
◎光里たち寺ガールの恋模様を見守りつつ、仏教に関する行事などにも触れることができる、温かく可愛らしいストーリーだった。私自身、三姉妹の真ん中で家が自営業ということもあり、後継ぎを意識したり、妹を気にかけたりする光里にとても共感した。
少女漫画ということもあり、読む前はあまり内容の深さを期待していなかったが、お寺に生まれたことで恋愛や将来に悩む彼女たちの姿は、あまり意識したことがなかったお寺のプライベートな問題が見えて、興味深かった。世襲制度が根強い日本の文化の中で寺院に生まれるということは、自分の将来が決められてしまう側面もある。男女関係なく、シビアで難しい問題だと感じた。普段サークルで接する仏教学部の友人たちも、当たり前のようにお坊さんになるわけではないことを、理解しなければいけないと思う。(表現文化学科/S.Y)
◎寺ガールを読んで、実家がお寺である人の日常やそれぞれ抱えている問題を知ることができた自分たちがお釈迦様に感謝をして、生活をしている。周りの人に感謝をされているのではないか。また、仏教にあまり興味のない人でも恋愛漫画の感覚で読むことができ、お寺の家に生まれてきた女性の生き方を知ることができたので、同じ女性として改めて尊敬の気持ちが生まれた。(臨床心理学科/H.T)
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いかがでいたか、(*^-^*)学生さんたちがまとめた内容だけでも十分おもしろいですね!!特に、「お寺の家に生まれてきた女性の生き方を知ることができたので、同じ女性として改めて尊敬の気持ちが生まれた。」といったこのコメント(臨床心理学科/H.T)はとても印相的です。漫画というのは、仏教に気軽く入れる良い入口としての役割を果たしていると実感しました。その他のコメントもすごくよかったです。仏教に対する、いや、日本の仏教文化が理解できるという点は、日本人だけではなく日本の仏教文化に興味ある外国人にも紹介したいですね。外国人は外の部分しか見えないですので、文化的に生きてる日本の生仏教はなかなか理解し固いところがたくさんあると思います。このよな漫画を通じて、いろんなことが学べる機会を与えらるということでは本当にもっとたくさんの方々が見てみてほしいところです。
また、大正大学の授業 (文化の探究 ー身近な仏教を知る) の先生をはじめ、素晴らしい感想文を聞かせてくださった学生さんたちに感謝いたします!!