多聞院お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
最近気になっていることに、テレビ、ラジオによる「過払い金返還請求」のCMがある。
CM料を払っても採算が取れる訳だから、返済に苦しんでいる方々が、如何に多いかの証左でもある。
借金の理由は様々だろうが、高い利子を払ってでも借りるしか無い現状は、同一ではないが、古代の出挙(すいこ)の制度を思い起こさせる。
私は、「大化の改新は無かった」派なので、その論拠の補強と貧農の生まれとしての興味で、「古代の土地制度」についてかじった事がある。
その時に、「今と変わんねーなー」と笑ったのが、出挙(すいこ)の制度(公私の二つ)である。
簡単に言いますと、公出挙(くすいこ)は国による強制的な貸付で、利息は30%から50%。
元々は凶作時の貧農救済政策であったが、やがて税金の一形態となる。区分田からの租より、捕捉率が高いのである。
私出挙(しすいこ)は民間による貸付けで、利息は100%。
暴利に映るが、貸し付けるのは春に蒔く種籾なので、収穫が順調であれば、理論上は問題がない。
ところが、自然相手だから思うようには行かず、凶作の場合は返済が出来ない。
その上、食べる物がなくなると、来春に困ると分かっていても、種籾を子供達の胃袋に収めるしかなくなる。
「かまどには火のけがなく、米をにる器にはクモの巣がはってしまい、飯を炊くことも忘れてしまったようだ」
「貧窮問答歌」山上憶良
そして来春には、富農から利息100%の種籾(私出挙)を借りるしかない。
結果、翌春には公私出挙の両方を帰さなくてはならず、自転車操業が続いてゆく。
富農は国から強制的に、利息50%の公出挙を押しつけられても、それを貧農に100%の利息で貸すわけで、困るどころか、新たな儲けを生む原資となる。
これに似たようなシステムが、現在もありますね。
いよいよ食べることが出来なくなった貧農の人達は、耕作義務の区分田を放棄して逃亡する。
いくら逃げても食べることは必要なので、仕方なく富農の奴隷になったりする。
私は今までに何人かの友人から、借金の返済で相談を受けたことがある。
お金を貸して上げる事は出来なかったが、打開策は一緒に考えられた。
困った時は一人で抱えこまず、知人や行政に相談する事が大事です。
道はあるものです。