多聞院お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
3月から中央線にグリーン車が新設されたが、最寄り駅立川から終点東京駅まで750円かかる。
1時間立つか、術後の股関節養生のために、750円払って座るかの決断は、貧乏症の私には一大事である。
5月20日。
「今日は旅行だからいいか」とグリーン車に乗った。
東京駅であさま号に乗り換えて、我が故郷佐久平駅で「弥次さん」と合流する。
私の格好は作務衣に頭陀袋一つで、お寺に行くのと変わりがない。
旅慣れた彼に全てお任せで、富山方面に行く以外は内容を全く知らない。この歳になると幸か不幸か、あれが観たいあれが食べたいがないので、金魚のフンが楽である。
相棒の弥次さんは、高校時代からの友人である。
彼は学校一番の不良(番長)、私は、「坊主頭廃止運動」を指導する生徒会の役員。
担任からも、親や叔母からも「彼と付き合うな」と、叱咤激論されていたベストカップルだ。
「良と不良」が紡ぎ出した青春時代の出来事は、60年以上経っても色あせませんなー。
次から次へと思い出話しが噴出して止まらない。
「あの時彼女に一言が言えていたら今頃は、、」などなど。
妄想は人を傷つけないし、お金はかからないから楽しい。
新発見もあった。
悪る過ぎた彼の退学が職員会議で決まった時、東京の高校に編入が出来るように、担任は「本人希望」の承認を各方面に働きかけてくれたとのこと。
名実ともに『恩師』である。
早めに氷見のホテルに着いて、まずは温泉でカラスの行水。
夕食はバイキングでないが、大広間に部屋別の席が指定されている。
圧倒的に多いのは老夫婦、ご婦人のグループで、爺さんの2人連れは私達だけ。✌️
何でも目立つ事は良いことだ。
翌日、高岡の国宝指定の瑞龍寺を参拝した。
「我が家と同じ宗派なので、どうしても参拝したい」と言う弥次さんに従った。
「ガイド如何ですか?。無料です」の誘いに、弥次さんが直ぐにのった。「無料」の効き目は大だ。
「彼は僧侶です」と弥次さんが私を指さしたら、ガイドさんが緊張しだした。
「宗派が違うので気楽にどうぞ」と私。
旅の終わりは、弥次さんのこれまた強い希望で、ガラス博物館にしたが、月一度の休館日にドンピシャ。
悔しがる彼を見ながら、「あの不良が今は俺より文化人だもんなー。人間は変われるってことだ」と納得。
思い出作りでは無く、古き良き時代の確認に終わった今回の旅である。
「拝啓 伊藤整様」
貴方の言うとおり、老人の場所から見る景色は美しいです。