多聞院お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
自坊の近くに鯛焼き専門店がオープンした。
人通りも多く商売には適地と思うのだが、店の入れ替わりが激しい場所である。
「今度は何屋さんかな?」と、改装を興味津々でみていたら鯛焼き屋さんだった。鯛焼きのみで商売するには、余程美味さに自信があるのだろう。
私の田舎には、鯛焼きで大儲けした人がいて、その方の家を「鯛焼き御殿」と呼んでいるとか。
御殿を見たことは無いが、その店の鯛焼きは何度か買っている。
何にしても甘党の私としては大歓迎だが、通りがかりに見た、『天然鯛焼き』の看板にびっくり⁉️。
大昔し『泳げ鯛焼きくん』と言う歌が、大ヒットしたが、泳げるなら『天然』も可能だろう。
広辞苑では『天然』を、
『人為の加わらぬ、自然のままの状態』と、記している。
桂文枝師匠(前桂三枝)の落語に、『鯛』がある。
料理屋の生けすに入れられて、出番(食べられてしまう)を待つ鯛達の会話が、人間の性格を巧く表現されていて面白い。
その中で
天然は 、「本鯛、真鯛が多く、元気がある。」
養殖は、「怖いもの知らずに育っているから、さばか
られる時に、ピクピクとする」との会話も
登場する。
これはやはり「百聞は一食にしかず」で、食べるが一番と店に駆けつけた。
「小豆を3個下さい」と注文すると、「3匹ですね」
と。
「そこもこだわるかー」と感心しながら、「どこが天然なんですか?」と尋ねると、「1匹づつ焼くのが天然で、連結器具で5匹くらい一度に焼くのが養殖です。」の回答。あちゃー、予想外。‼️
「じゃあ、養殖も1匹下さい」と請う私に、「うちは総て天然です」と胸を張る店員さん。
ちなみに1匹が260円で、鯛焼きとしては高いのか安いのか、私には分からない。
落語に戻って、
生けすの老鯛主が新入りの若鯛に、「お客とは眼を合わせるな。合ってしまったら腹を上にして、元気が無い様に振る舞え。俺はそうして20年生き延びた」
と延命のアドバイスをする。
とは言いつつも最後、老鯛は若い鯛を助けて、
『まな板の鯛』となってしまう。