お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
ある日の中央線。私の反対側、7人席の内訳である。スマホ6人、スポーツ新聞1人。今は余り聞かれないが、「ながら族」という言葉がある。時間の有効活用もあろう。でも時々は、人工の音や画像から離れて、遠くの雪山とか鳥の囀りとかに反応してみてはどうだろうか。「目には青葉山ホトトギス初鰹」は、山口素堂の句である。参考にしたい。昔し、かなり昔しのことである。故郷に向かう夜汽車から、闇の中を飛去ってゆく家々の灯りを眺めながら、涙したことがあった。涙の訳はもはや遠く霧の彼方である。思い出を食べながら、息をしている今日この頃だが、「老人の場所から見る景色は美しい」、と言った伊藤整の胸中にははるかに及ばない。