漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
「百姓に学問は要らない」と言われた時代がある。そう古い話しではない。
私は公立高校の農業科を卒業しているので、エリートである。
もっとも卒業後農業に就いたのは、同級生で一人しかいない。中学の成績の都合で受験しただけである。自宅近くの進学校の前を通ってわざわざ遠くの高校に通う。身体の鍛練にはなるが、人間勉強すべき時はやっておくもんだと小さい後悔をした。
農業科だから必然、英語、数学なんてものは、週に1、2時間しかない。望むところである。主な科目は、作物、草花、畜産、養蚕等々、さすがエリートコースである。
昼食後(昼飯は2時間目の後か、授業中に済んでいる。)は、作業服に着替えて毎日実習である。田植えをしたり、野菜や果物を作ったり、草花を育てたり、ゆとり教育の魁けである。
昼飯が早いのでお腹が空くが、作物を口にすると停学処分となる。例えキュウリ1本といえども県の財産なのである。されど空腹は身体に良くないのでさっと食べて、もとの部分は穴を掘って埋める。猫の用足しに似ている。収穫した農産物はリヤカーに積んで、街に売りに行く。嫌な当番だったがあっと言う間に完売する。安くて美味しいのか、同情なのかは分からない。
ある日親父が、「今日はリンゴの消毒をするから、学校を休んで手伝え。学校に行っても、どうせ同じことをするだけだから」と言う。学校のほうが楽だと思いつつも、納得。
現在母校は他校と統廃合されていて、往時は偲べない