お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
私の故郷は信州の佐久である。小諸城(現「懐古園」)から千曲川に向かって少し降ると、島崎藤村ゆかりの中棚荘(中棚温泉)がある。さすが文人墨客に愛されただけあって、趣きのある「大人の隠れ宿」だ。
露天風呂は小さいが、新緑の季節に木漏れ日を浴びての入浴は清々しい。脱衣場は畳敷きで、しかも湯船と同じ部屋にある。
10月から5月頃まで湯船に林檎を浮かべて、「初恋りんご風呂」と称している。
小諸に住んだ島崎藤村の若菜集、「初恋」からとったものである。
「初恋とは、友達以上恋人未満」は私の造語だが、結構気にいっている。小学校の同級会の席で、場の盛り上がりを期待し、「私の初恋の相手は◯◯ちゃんです。」とカミングアウトした。
結果、「そんなこと皆んな知ってるよ」と、うけなかった。
「余計な事を言わないで」と初恋の相手から叱られるかと思ったが、化石的な話しなのでお咎めは無かった。
童謡「故郷」は、信州中野が生んだ国文学者、高野辰之博士の作詞による。高野博士が学び、または教鞭をとった小学校が、今「高野辰之記念館」となっている。館内に周囲の山々のパネル写真が貼られていて、「兎追いし彼の山」がどれか分かる。
係員が音楽室でオルガンを弾いてくれて、「故郷」、「もみじ」、「春の小川」などなどが唄える。
2年前小学校の同級会で訪れた時、皆んな照れながら唄っていたが、それぞれの気持ちはその場に無かった。
新幹線が通り高速が走り、「忘れがたき故郷」も近くなった。