お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
数ある好きな花の中で、桔梗と竜胆がダントツである。先日「桔梗と朝顔は名前が入れ替わった」と記したが、紙面の都合上理由を書けなかった。以下は通説と自説である。
桔梗は秋の七草の一種だが、七草は山上億良の万葉集歌、
「秋の野に 咲きたる花を 指折り
かき数えれば 七種の花」
「萩の花、尾花葛花、撫子の花、女郎花、
また藤袴、朝貌(あさがお)の花。」
に根拠をおく。
最後の「朝貌(あさがお)」とはどんな花か。
桔梗、木槿、昼顔等の説があり、又「朝に咲く美しい花の総称」とも言われる。
「それは桔梗だろー!」派を、援護する理由が
2つ。
1、そもそも朝顔は平安時代(奈良時代説あり)に中国から伝わった外来種で、憶良が歌った時代に日本の野に存在していない。
2、日本最古の漢和辞書(901)「新撰字鏡 」の、桔梗を説明する項に「阿佐香苧」が出てくる。
以上の理由で万葉時代に、在来種の桔梗は、「朝貌」と呼ばれた可能性は高いが、なぜ桔梗と呼ばれ出したかの考証は難しい。
それでも、憶良から新撰字鏡までの約200年の間に、「朝貌」から「桔梗」にかわった事は予想される。
長いこと日本の野を飾っていた私の桔梗も、現在では絶滅危惧種IIに指定されている。
山野草ファンの皆さま、野山で出会ったら見るだけにしましょう。
さて朝顔である。
中国から薬草として我が朝にやって来たが、当初の漢名は「牽牛子」であった。それが「朝顔」と代わった過程の立証は困難である。
従って「諸澤説」展開の余地が生まれる。
牽牛子の名前で日本にやって来て、少しずつ
全国に勢力を拡大したが、現代と違い必ずしも正式名が伴って、種、苗が伝播するわけではない。名もない花として伝わり、従来から有った「朝咲く美しい花の総称ー朝貌」に仲間入りした。
仲間の花々は徐々に個別名を貰って独立したが、最後まで残った「牽牛子」は、「朝顔」を個別名として名乗る事になった。
「牽牛子に 日本名譲りて 日中友好」、
で如何でしょうか。
ちなみに明日香村の「牽牛子塚古墳」は、
「あさがおこふん」とも呼ばれている。
花に興味の無い方、最後までお付き合い頂きありがとうございました。