お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
「AI君、電気を消して」
「AI君、今夜の夢は富士山、鷹、茄子の何れかにセットして」
最近、「AIの発達と人間の幸せについて」、様々な分野で議論されている。
私は、「危ういなー」と、危惧している一人である。
「便利と幸福は直線で繋がらない」と考えているからである。
先日テレビで、「AIの発達により、家庭生活が幸せになる」との発言があったが一面的過ぎると思う。
とかく言う私も、今スマホでこの原稿を作成しているので、技術発展による便利さを享受している。
医療現場へのAIの進出も目覚ましく、胃のレントゲン画像の解析は、人間より数段上だと言う。便利なものは、人類の未来を脅かさない限り、どんどん使えばよい。
だが、私が危惧するのは、その便利さが万人に平等には届かないことである。
数年前のテレビ番組である。
一家の大黒柱である旦那さんが癌と闘っている。確実に効いている薬が高額で、家計を圧迫して家族が生きて行けないので、打ち切ったと言う。
この時、親父から聞いた古い話を思い出した。
祖父が大病して、その後命が助かった時、
「俺は助けてもらわなくてよかった。その資格がない。女房が病んだ時に薬を買ってやれず、死なせてしまった」と、うな垂れたと言う。
昭和初期の話だが、今日も同じ様な事が繰り返されている。
如何に技術が進歩して便利になっても、
「共生」の哲学と宗教心がなかったら、その恩恵は色あせるし、人類に分裂さえ生じかねない。
「AI君、俺の寿命を教えて」
「はい。残り2019日と2分1秒です」
「お前の寿命は?」
「はい。永遠です」
老僧の独り言である。