漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
『老僧の独り言 5』の続きなので、可能な方は「お寺の漫画図書館」で検索して再読して頂けたら有難い。
ある方から「逃亡者生活の内容を書いて欲しい」と便りを頂いた。有難いことである。極めて個人的な内容だが、頑張ることにした。小学生の私が襲いくる死の恐怖に対して取った態度は、「何十年も先なこと、どうせ逃げられないのだから楽しく遊ぼう」と自分に言い聞かせることだった。棚上げ策だから当然効果は低い。中学生、高校生へと成長するにしたがって、死に対する恐怖は質を変えた。自分の意識が無になるのに、この世は無限に継続してゆく。無限にである。到底受け入れ難く、恐怖は理屈でなく、パニックを伴うようになった。永く人間でいたら、自分は確実に壊れると感じた。生きる目的が、「壊れない方法探し」と自然定まってしまった。
恐怖=パニック出現の時間と場所に統一性がある事を知って、先回りして自己防衛することにした。昼間は暇を作らず、趣味を次々と変え、夢中になれるものを沢山抱えた。夜空を見上げて、銀河系の果てまで200億光年とか、無限・有限といった概念に近づくことは避けた。昼夜問わず(特に夜)、横臥する時はラジオの世話になり、神経を研ぎ澄まさないようにした。だが睡眠中に突然襲い来る攻撃には、抗する術がなかった。仏教書も読み漁ったが、生に対する執着心は抑えようがなかった。
60歳に達して、死がカウントダウンを迎えた時、逃亡者生活を送っている余裕は無くなった。3年前に僧侶となって、逃げない生き方を模索しつつ今歩いている。貴方の役には立たなかったかも知れないが、わたくしの経験を正直に書いたと言うことでお許しを頂きたい。どうぞ豊かな人生を。