6月4日の虫歯予防デーを前にして、とうとうやって来た、入れ歯デビュー。
「諸澤さん、終わりました。自分でやって見て下さい」と、歯医者さんが言う。
「え、何にを? 自分で?」
渡されたのは、3センチ程の部分入れ歯だった。
全く呑気な私である。治療を始めてから随分経つのに、ドクターの説明をほとんど聞いていない。
4 0年以上の信頼関係にあぐらをかいて、治療方針は一切お任せで、私は口を開けるだけの、診察台の鯉である。
「今話しを聞いていないでしょう」
我が家で時々飛び交う単語だが、老化現象を口実にした、「ドメスティック デスタンス」である。
渡された入れ歯、これが実に良く出来ている。本物と遜色なく、それを受ける口内の装置が技工的で、「あれ、歯医者さんて、匠なんだ」と、妙な感心をする。
今更なのだが、小さい頃から歯磨きを、真面目にしておけぱ良かったと、今しみじみ思う。
経済的なのか、文化的レベルなのかは知らないが、我が家にハブラシが無かった。
それを考慮すれば、「My teeth達は頑張ってくれた」と、言っても良い。
しかし上には上がいる。
戦後29年間、ルバング島ジャングルで逃亡生活を送った小野田寛郎少尉や、グアム島で28年間もジャングルに居た横井庄一さんは、虫歯にならなかったのだろうか?。
もっと古く、古代の人々はどうしていたのだろうか。
以下は入れ歯デビューを記念して、獲得したにわか学問の成果である。
肉食の狩猟民族より、採食民族の方が虫歯が多いと言う。穀物が主食になると、雑菌が増えて虫歯の原因になるようだ。
それだ!!️ 虫歯が多いのは、小さい頃肉を食べなかったからだ。
原始人は食生活が原因で、そもそも虫歯が無かった、と言う説がある。産まれるのが遅かったか。
古代人になると、除菌作用のあるハマスゲや麻痺効果のある植物を利用していたようだ。
それで駄目なら、「抜いちゃえ」が主流らしいが、かなり痛そうだ。
ハマスげは雑草だが花の部分が、線香花火のシャカシャカに似ているので、割と見つけやすい
歯を磨く習慣は、インド、中国、日本へと、仏教伝来とともに伝わっている。
日本で最初に義歯をつけたのは、尼僧沸姫(1538没)で、仏師が作った。
仏像製作の依頼が少ない時の、生活を支える術だっようだ。
僧侶の私が義歯に頼るのは、歴史的な理である。
701年大宝律令の医療制度で、「歯科」が確立されているので、歯医者さんの歴史もかなり古い
入れ歯デビューが照れ臭いので、まだ家族には伝えていない。特に理由は無いのだが、バレるまで黙っていようと思う。
それか食事中に、「あ、大変!!️、歯が壊れた」と言いながら、おもむろに義歯を取り出して驚かせる。
こんな悪戯を計画したが、「悪趣味」と非難を受けそうなので、見合わせている。
何事も、「キープ ドメスティック ディスタンス」