漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
「村八分」と言う言葉がある。「仲間外れ」の代名詞として使われるが、真意は違う。ご存じの方も多いと思うが、残りの二分は「火事と葬式である」。つまり、どんなに嫌いで対立した関係であっても、火事と葬式には駆けつけなさい。それが人の道であるとの教え。
消防士として4年間活躍したあと持ち前の好奇心と未熟な正義感故に、消防署をやめて郵便屋になった。それも同じ市内である。 ある日、何時ものように鼻歌まじりに郵便を配っていると、突然けたたましいサイレンの音。まずい、この音はまずい。仕事上の義務か、人の道か?、火の手は近い。気がつくと火事場に立っている。
ホースは既に延びていて、筒先を持っている班長はつい最近までの上司。「諸澤、良いところに来た。水を出すよう機関員に言ってくれ」と言う。 水が出る前に、私は水を得た魚となった。消防車に駆けつけ、作法通り右手を高く挙げて、「放水始め」とやったから機関員は目を丸くした。自分に命令しているのは、どう見ても郵便屋である。
無事に鎮火して、未配の郵便を沢山抱え、ずぶ濡れになって帰局。今度は現在の上司から、「どうしたその格好は?」「人の道を果たしました」って言える訳がない。
消防署から郵便局に、感謝の連絡が入ったら、右手に感謝状、左手に懲戒処分辞令書となる。
絶妙のバランスだが、幸か不幸か連絡はなかった。