多聞院お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
「あーあ、明日から5連勤だ」と、娘のため息が聞こえる。遠距離通勤の上、夜勤も多くて大変のようだ。
私が郵便局に就職した52年前は、6連勤が当たり前で、年賀状繁忙期には30連勤があったが、そんなことを言ったら、「時代が違う」と一蹴されそうだ。
古典落語『藪入り』は、奉公に出した息子の里帰りを待ち侘びる、父親の心情を表現する。
4年制の小学校を終えて奉公に出されと10歳前後で、その厳しさは、私達の集団就職の比ではない。
休日は年2回の藪入り(1月16日と7月16日)しかなく、しかも3年間は里帰りが許されない。
一度帰えすと里心がついて、店に戻らない可能性があるからである。
息子亀吉の初めての里帰り。
迎える親は嬉しさのあまり、前日の夜は眠りにつけない。
エピソード1
父親:「おい今何時になる?。この時計、進むのが遅いんじゃねえか?。お前立ちあがって、針をぐるぐる回せ」とカミさんに命ずる。
エピソード2
亀吉帰宅後
父親:「おい、やろうは大きくなったろうなー?」とカミさんに聞く。
母親:「やだねー、お前さん。目の前にいるんだから、自分でごらんよ」
父親:「見てえんだけどな、見ようと思うと目から何か流れてきて、見えねんだよ。」
エピソード3
父親:「風邪引いた時、お見舞いの手紙を有難うよ。
お陰で良くなった。 その後も風邪を引きそうになると、お前の手紙を握りしめる。すると治っちまうんだ」と息子に言う。
ネタバレになるので、今日はこのくらいで。
「人はみな故郷が恋しくなって、一度は泣きに帰るもの」 (池田充男ー白い海峡より)
私は田舎から東京に上って56年経つが、泣きに帰ったことは一度もない。
ただ、帰省の折に涙したことは度々ある。