多聞院お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
「年が明けたー、今年の正月はゆっくり出来そうだ」
と少しのんびりしていたら、あっと言う間に15日になった。
本日1月15日は『小正月』ともよばれ、様々な正月行事が終わるので、『正月事納め』とも言われる。
正月は1月の別称だから、1ヶ月の期間があるのだが、実際は正月の行事が行われる本日辺りまでであり、今日までを『松の内』とする場所もある。
お節料理、書初め、七草粥、鏡開き、まゆ玉、どんど焼き(左義長)などなど、様々な正月行事を行いながら、本年の五穀豊穣、無病息災を祈る。
昨年末佐久市西耕地区の、「十日夜のわらでっぽう」を紹介したところ、「懐かしい、小さころやりました」等々の反響を頂いた。
本日も同地区の珍しい正月行事を紹介する。
佐久市西耕地区では正月の2日に、小学校生がPTAや民生委員のサポートを受けながら、地区内約135件のお宅に『甘茶』を配って歩く。
各家から一椀300円を頂戴して、子供会中心の行事である『天神講』の費用とする。
天神講は学問の神様である、菅原道真公のお祭りだが、私の生まれた佐久市小宮山地区では、『五目ご飯』が必ずご馳走として出された。
TVやゲームのまだ無い時代で、子供達には楽しみの行事だったが、詳しい内容は忘れてしまった。
興味深いの、なぜ正月の2日から『甘茶配り』なのかである。
『甘茶』と聞くと大概の人は、釈迦さまの誕生仏に甘茶を濯ぐ、4月8日の花祭りを連想する。
ここからは私の推論である。
○ 甘茶の生産で有名なのは長野県信濃町だが、佐久地方でも栽培されていた記録があるので、豊作を願う行事として甘茶を用いた。
○甘茶を入れた墨で習字をすると、上達が速いとの伝承があり、2日は『書初め』の日である。
○ 甘茶を飲むと風邪を引かないとの伝承もあり、地区全体の健康を願って、甘茶を配るのかも知れ ない。『甘茶』を神酒の代わりとする場所もある。
ちなみに甘茶は山紫陽花の変種で、アマチャヅルとは別物である。
伝統行事を維持し、伝えてゆくのは結構大変なことである。
行事の意味や必要性の共通認識や、地区員の協力が不可欠となる。
次の時代を担う子供達に、良い思い出を遺そうとする、西耕地区の皆さんの気持ちが窺えて嬉しい。
これからも長く続いて欲しい、正月の行事の一つである。