お寺の漫画図書館スタッフの酒井正空です。
今回も引き続き仏教コミックスシリーズの『宇宙のお経 華厳経』を取り上げたいと思います。このマンガは善財童子という初心の修行者が先徳の53人の求道者に教えを請うという『華厳経』の「入法界品」に基づくストーリーです。
善財童子が修行の旅の中で5人目に出逢うのは解脱長者なのですが、解脱長者が善財童子を導く場面もまた素晴らしいです。善財童子が長者に「どのように修行をすればさとりに到るのか、どうか教えてください」と尋ねます。すると長者は「こちらへ来て、精神を集中するための部屋にわたしと共にお入りください」と云って、善財と一緒に念仏三昧の行に入ります。そして善財は時も忘れて念仏中に現れた仏や浄土の有り様に集中した修行を行いました。
解脱長者は善財童子に仏教の教義的なことは一切語らず、ただ共に念仏して長者自身の教えを示したところが本当に素晴らしいと思います。念仏するとき、坐禅するとき、瞑想するとき、この人とならばどんな修行も苦にならないというような修行仲間(道友)は仏道を歩むうえで最高の宝ではないでしょうか。近代の念仏聖者・山崎弁栄上人(1859-1920)は信仰心が喚起されるには「自修」と「伝燈」があると云います。「自修」とは自ら一心に行を修していくこと、「伝燈」とは師友の心がこちらに伝わって信仰心が喚起されていくことであると述べています。
自分ひとりで仏教の学びや修行を進めていくと必ず迷いや悩みが出てきますが、そうした時に信心を喚起させてくれる道友がいれば、互いに励まし合いながら難所を乗り越えていくことができるのだと思います。