お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
「消防士や郵便屋の話しをもっと教えて欲しい」と手紙を頂いた。
書きましょう!
私19才、将来を嘱望された消防士。配属された消防出張所の目の前に高い塀に囲まれた大邸宅があった。
その家に美しい年頃のお嬢様が2人住んでいた。階級社会のことで言葉には出さないが、若い署員は皆んな憧れていた。 私も当然、「右にならえ!!」である。
当時望楼勤務と言うのがあり、一時間交代 で高い火の見櫓から町を見渡して、火災発生に備えていた。遠方を見張らないで、なぜか真下ばかり見守ってしまう。
「火消しとて消すに消せない恋の火か」、なんて馬鹿な歌を口ずさみながら一時間を過ごして結局は、「俺はお上りさんの田舎者、無理だよなー。」と呟やきながら梯子を降りることになる。
ところが或る日、奇跡が向こうから歩いてやって来た。
何とお嬢様から私と先輩の2人が、大邸宅のクリスマスパーティに招かれたのである。
「え、なぜ俺が?、ひょっとして、、、将来姓が換わったりして。通勤は近いぞ。」(中略)
パーティも盛り上がって終盤、お嬢様からダンスのご提案。
「聞いてねーよ。昔し小学校の校庭でおぼえた炭鉱節か、オクラホマミキサーしかできねえし」
すると50歳位のおじさんが、サッとお嬢様の手を取り、踊り出したのである。
私は高嶺の花を目の前にして、壁の花とならざるを得なかった。
「そっか東京って所は、社交ダンスが出来ないと駄目なんだ」、、、と合点。
消防士は迅速が命。
翌日にはダンス教室のフロアーに立っていた。先生の足を踏みながら懸命に練習して、殆どの曲は踊れるようになったが、その後お嬢様からのお招きはなかった。
お手紙を頂いたHさま、何時も読んで頂き有難うございます。次は武勇伝にしま す。