多聞院お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
これは35年以上も前の旅行記である。一人旅の暇さもあって、毎日旅行記をつけていたのだが、いつの間にか紛失し、記憶を辿って書いている。印象的な出来事は結構忘れないものである。
「アメリカへ行こう」の動機は、単純な思い込みから始まっていた。
18歳の時、自分に対する強い劣等感を持ちながら、山国信州から東京に出て来た。
お上りさんの私は、都会の生活が始まってから、更に劣等感を強くした。
中学生時代からの、頑固な英語アレルギーを克服したら、胸を張って東京で生きられると思い込み、英会話を始める。
その結果の、「アメリカに行こう️」である。
根拠が薄いから、「思い込み」なのだが、「瓢箪から駒」ってこともあり、捨てたもんじゃない。
ラスベガスを早々に退散して、バスでサンフランシスコに向かう。
バスの都合で夜の到着となり、まずは寝ぐらの確保だ。
ガイドブックのホテルを目指し、夜の町を歩きだして、横断歩道で信号待ちをした。信号が変わる前に反対側から、男が5、6人が私を目指して駆けてくる。
「あ、やられる、殺される」と、一瞬身を硬くする。
何にも無かったのだが、「夜の一人歩きは危険」の先入観も、余計な恐怖を生むものである。
ホテルに入って観光場所を、日本人街、フィシャマンズワーフ、ツインピークス、ゴールデンゲートブリッジと決める。
何回も書いたが上記の場所に、特段魅力を感じている訳ではない。アメリカに来たんだから、寄っておこうか位の乗りである。
坂の街サンフランシスコ。
数年後この坂を、阿波踊りで登ることになる。
先ずは定番のケーブルカーに乗ってフィシャマンズワーフに行き、これまた定番のカニを食べる。
味の記憶は全く無い。
日本人街に行って日本語の本を買う。英語力の実験に来ているのだから、英語の本を買えば優等生だが、実力は自分が一番良く分かっている。
求めた本がケネディ大統領暗殺に関するもので、思わぬところで、アメリカ社会の勉強をすることになる。
興味が湧いて、ホテルの部屋で一気に読み上げる。
「凄い社会だなー、夜の街で殺されなくて良かった」
「明日からも気をつけて町を歩こう」と、更に警戒心がます。
大統領じゃないから、暗殺される心配はないか。