お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
世の中は花見シーズン真っ盛りである。この花見、遣隋使が持ち帰った習慣で、当初は梅の花であった。 平安時代に梅から桜にシフトしたようである。
「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」ー在原業平
「世の中に桜さえなければ、、、」と言わざるを得ない程、桜が好きなのである。また「世の中に酒さえなければ、、、」と溜め息をつくのに似ている。私の場合は虎屋の羊羹だが(笑)。
さて毎年「開花宣言」の時期が話題になる。標本木の開花数のカウントをめぐって、静かで小さな論議がある。胴吹きの花をカウントするか否かである。太い幹に咲く花を、見たことがあるだろうか。これを「胴吹き」と言う。老木に発生する特長で、エネルギー不足の表情でもある。枝の先まで栄誉を送る前に、幹で早く咲かせる緊急対策である。この胴吹き花をカウントするか否か、各地方の標本木によって違うのである。基準が同一でないと比較になりにくい。
桜の寿命は60年から70年で、手入れを良くすれば100年が可能と言う。 ほば人間と一緒だ。私は今、老木である。「最後のエネルギーを振り絞って、幹に花をつけたのだから、カウントして下さいよ。」と主張するか、又は「どうぞ若い皆さんの枝で。私もそんな時期があったのだから」と、黙って見守るか。
「葉隠れ」ならぬ、「胴隠れ」でまいりましょうかね。