お寺の漫画図書館スタッフの酒井正空です。このコーナーでは漫画図書館の蔵書を紹介していきます。
今回取り上げるのは仏教コミックスシリーズの『おシャカさまの最後の旅』です。このマンガは『ブッダ最後の旅』でも知られる『涅槃経』の後半部分をもとに描かれています。この中から印象的なシーンを紹介したいと思います。
お釈迦様がアームラパーリーの林園に滞在され説法が行われた時、林園を寄進した在家信者の遊女アームラパーリーは聴衆の一人として駆けつけます。お釈迦様に拝謁した彼女はお釈迦様から出ているまぶしいほどの光によって思わず「うっ、まぶしい!」と嘆声をもらし、身に着けていた装飾品を見て「どっどうしたのかしら…… 今まで光り輝いていた宝石や衣装が一瞬にして輝きを失いみすぼらしくなっていく」と述べます。
このマンガではお釈迦様が放つ光の所以を明かしてはいませんが、『無量寿経』にはこの光の所以が「三相・五徳」として説かれています。つまり、
《そのとき世尊諸根悦豫し、姿色清浄にして、光顔巍巍たり。》
〔(現代語訳)その時世尊は、全身から喜びがほどばしり、お姿には一点の汚れもなく、光り 輝くお顔は威厳に満ち溢れ神々しかった。〕
という「三相」と、
《今日世尊奇特の法に住し、今日世雄(せおう)諸仏の所住に住し、今日世眼(せげん)導師の行に住し、今日世英(せよう)最勝の道に住し、今日天尊如来の徳を行じたまえり。》
〔(現代語訳)本日、世にも尊き方(世尊)は、誰にも到達し得ないような極めて尊い真理を体現しておられます。本日、世にも雄々しき方(世雄)は、諸仏のみ仏とともに覚りという境地に安住しておられます。本日、世間の人々の眼を開く方(世眼)は、人々を導く行に専念しておられます。本日、世間において智慧の最もすぐれた方(世英)は、煩悩に打ち勝った無上の覚りの道を歩まれています。本日、神々も及ばぬ尊い方(天尊)は、人々を導く如来としての徳を修めておられます。〕
という表に現れた三相の内容と阿難尊者が「世尊・世雄・世眼・世英・天尊」と順番にお釈迦様を讃える「五徳」のことです。
マンガではこの「三相・五徳」から放たれる光が余計な説明なしにワンカットで描かれ、それに感化されるアームラパーリーがとても印象的なシーンとなっており大変素晴らしいです。