多聞院お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
私は僧侶になる前、長いこと公務員をやっていたが、大事なことは休まず遅れず職場に行くことで、作業能率や態度はその次であった。
今は知らないが、1分遅刻しても賃金がカットされ、3回やれば実損の伴う処分が出た。
ある時5分程遅刻した。
通例では課長席前にある出勤簿に印を押して、遅参簿に理由を書くのだが、私は手続きを無視して、そっと仕事に着ていた。20分程して上司が近寄って来て、「諸澤何やってんだ、出勤簿の印を忘れてるぞ」
「はい、大変申し訳ありません。」
「俺の勝ちーと️」
ここからはつい最近の話しである。
ご法事ご葬儀を頼まれた時、先ず迷うのは車にするか電車にするかである。どちらにしてもリスクはあるが、兎にも角にも遅刻は厳禁なので、相当に時間的余裕を持って家を出る。
先日、北越谷の霊園からの法事を受けた。
南越谷に着き、路線を乗り換えて北越谷に行こうとしたら電車が止まってる。
乗り換えを止めてタクシーを選択したのだが、乗り場は長蛇の列である。
法事の時間は刻々と迫ってくるし、「さあ、どうしよう」と、呆然と立ち尽くしていたら、「和尚さん、困っていますよね。知り合いのタクシー会社に頼んであげます。」と、ご婦人が声をかけてくれた。
法衣の力なのだろう、「助かったー」と小躍りしたのだが、結果タクシー会社も混雑していて、車は一台も無いと言う。
「では2、3分待って下さい。待合せしている友人が着いたら、北越谷の駅まで送ってあげます」
本当に有難い話しである。
車中の会話で分かったのだが、これからスポーツクラブの大会で、私を送っていると遅刻になるようだ。
最寄り駅について、「些少ですが」とお礼を差し出したのだが、何としても受け取って貰えなかった。
最寄り駅北越谷のタクシー乗り場も同じく長蛇の列である。
霊園まで走るには、骨折が治ったばかりで無理がある。
意を決して、駅ロータリーに停車中の一台の車に近寄り、「誠に図々しことですが、◯◯霊園まで乗せて頂けませんでしょうか?」とお願いした。
「お困りのようですね。良いですよ。友達が買い物から直ぐ戻りますから待ってて下さい」
これで何とか遅刻せずにすむと、胸を撫で下ろした。
カーナビに霊園の住所を入れて頂き向かったのだが、細い道等が多くてスムーズに行かない。
運転者さんが途中の交番で尋ねてくれて、定刻前に着くことが出来た。
固辞する謝礼を、今度は少し強引に渡して車を降りた。
霊園の事務員に帰りのタクシーを頼むと、やはり車が無いとのこと。
法事を終え駅まで歩こうとする私に、「和尚さん、本日は有難うございました。駅まで送らせて頂きます」、と事務員さん。
大勢の人々に親切にして頂いた、長がーい一日でした。
合掌