多聞院お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
先日法務の帰りに、東村山市の国立ハンセン病資料館に立ち寄った。
ハンセン病文学の新生面
『いのちの芽』の詩人たち
と題した、企画展が開催されている。
私の手は曲がっている。
しかし摑まねばならない。
歯が抜けている。だが噛まねばならない。
眼球を失っても 見ねばならず、
足を失っても歩かねばならない。
志樹逸馬『生きるということ」より
17歳の夏、母が体調を崩して入院した。
当時の病院は完全看護ではなく、重症者には病人家庭の責任で、付添の看護人をつけるシステムのため、私が高校に通いながら病院に泊まり看護をしていた。
母は自分の病気をハンセン病と誤認し、他言無用と前置きしながら私に打ち明けた。
ハンセン病について誤った知識をもち、その上、薬の副作用で聴力を完全に失った、母との筆談による意思疎通は困難を極めた。
我が国のハンセン病問題の歴史は古く、古代までさかのぼる。
すべての患者さんを療養所へ閉じ込めることに、法的根拠を与えた、『らい予防法』(昭和6年制定)が、平成8年に廃止されてからも、今日までなお続く患者さんやその家族に向けられる偏見差別は、近代国家の間違ったハンセン病対策に原因がある。
医学が進歩し、有効な薬が発見されたり、らい菌の感染力は極めて弱いことが判明しても、人権を無視した隔離政策をやめなかた。
一方で、民衆の持つ偏見差別意識も、隔離政策を支える力となっていた。
「人権問題の解決のためには、ハンセン病への正しい知識を身につけ、私たち一人ひとりがみずからの意識を見つめ直すとともに、自らを啓発していくことが大切です。」 ( 資料館パンフレットより)
隔離された患者さん達が、施設内でどんな生活を余儀なくされたか、或いは家族が受けた偏見差別の実態は、ハンセン病資料館に是非足をお運び頂き、確認して頂くことをお薦めいたします。
企画展
5月7日(日) まで 午前9時30分〜午後4時30分
休館日 月曜および「国民の祝日」の翌日
国立ハンセン病資料館
東京駅東村山市青葉町4-1-13 042-396-2909