お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。多聞院には10メートル四方位の小さな庭がある。塀に遮られて外からは見えない。計画的な植栽はされておらず、真ん中に雑草畑、周りに椿、侘助、姫しゃら(夏椿)、ハナミズキ金木犀等が植えられている。草刈りは私の仕事。嫌いではない。「雑草君、今度はバラかコスモスに生まれておいで、ゴメンな」と、詫びながら鎌を振り下ろす。かと思いきや、「お前達のせいで俺が苦労している。」と、鎌を振り下ろす時もある。椿は私の大好きな花の 一つ。炉の季節、茶花の女王様である。備前の花生にツクバネを副えとして、床の間に活けられた白玉椿などは、躙口から見上げた時胸がキュンとなるものだ。この椿、庭に植えてはいけない、と言う御仁もいる。椿は普通花びらを一枚づつ散らさず、花首から花全体がポロっと落ちる。縁起が悪いと言うのだ。同じ光景を見て、散り際が潔いと言う人もいる。だから人間は面白い。
諸澤正俊