お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
今年もまた時の記念日、6月10日がやってくる。浄土宗東京教区教宣師会主催で、自死者追悼法要「倶会一処~ともに生き、ともに祈る~」が増上寺において営まれる。これは自死予防の活動ではない。ご遺族と僧侶が共に祈る法要である。私は5年前遺族の一人として、緊張しながら山門をくぐった。全ての人が阿弥陀仏の本願によって救われるのだから、自死者だけを特別扱いする必要はない、と言う意見がある。しかし自死遺族には遺族特有の悩み、苦しみが存在する。一つを上げると、「自ら命を絶った者は往生出来ないのでは?」がある。まれに同じ意見を持つ僧侶もいる。年間約三万人の自死者の中に、心から死を望んだ人が何人いるだろうか。本当はもっと生き続けたかったに違いない。その努力を懸命にしたのだが、最終的に抱えた問題の解決方法として、自死を選ばざるを得なかったのだと思う。そんなご遺族に僧侶からの、「大丈夫、往生は叶います」の言葉は心強い。止まってしまった時計の針が、ゆっくりでも動き出してくれるかも知れない。
私は宗徒の一人として、浄土宗の中にこの法要が在ることを誇りに思っている。当然交通事故、犯罪、病気等々によって命を落とされた方々のご遺族に対しても、個別性に適応したケアーやともに祈ることの必要性はある。紙面の都合で追悼法要の一側面しか述べられなかった。 至心合掌。