お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
「自販機を息抜きとして生きる」は、外働の特権である。
「自販機を素通りしない男」とは、郵便屋時代の私のニックネーム。いくらコーヒー好きでも、全ての自販機で飲んでいたら、私の腹は真っ黒になるので、勿論誇張された尊称である。遠くから私に向かって来る仲間を見つける。
「良し、カモが来た。コーヒータイムだ。」と思いきや仲間が視界から消える。
「あ、逃げやがった」
ある日帰局すると上司に、「諸澤、ちょっと来い!」と課長席に連行される。
「『自販機の前で、郵便屋さんが大勢でジャンケンして、大騒ぎしている。』と通報があった。お前だろう」と言う。
大勢でと言ってるのに、なんで「お前だろう」になるのか不満に思ったが、
「飲むなとは言わん。もっと上手くやれ」
と続いたので不問にふした。
ある商店の横に自販機が4、5台並んでる。
薄給の公務員に優しい機械で、押し方によって複数の缶コーヒーが出てくる時が有った。
従って奢り役をきめるジャンケンが必要ない。課長にも呼ばれない。
店の叔父さんが外にいる時は、一人が自販機の間に立って、「ガラガラガラガラ」を隠し、
一人がかきだす。
そんな訳だから、その種類だけ異常に早く、「売り切れ」のランプが点灯する。
「叔父さん、俺の好きな微糖タイプが売り切れなんだけど!」
「あー、あれ評判が良くてさ、業者に補給を頼んであるよ。ちょっと待ってや」
長年お店の売り上げに貢献してきた私も、さすがにちょっと後ろめたくなってきた。
が仲間の一人は、何本出るかが楽しくて、出勤前に試して来る始末。
「今日は3本出たので、良い一日となりそうだ」って。
「仕事中に行って、一本しか出なかったらどうすんだよ」と、レベルの高い諍いである。
2週間ほどして、「故障」の大きな紙が貼られ、霙の中を凍えながら働く、私達の楽しみは儚く消えてしまった。
私生活での話しである。
帰省のおり、インター前のドライブイン(今はない)の自販機で、十六茶を買ったら12本出て来た。
「気の利かねえ機械だなー。あと4本出せばマジ十六茶なのに」と、悔しい思いをした。
さて私は散々迷った挙げ句、11本を店に返したでしょうか?。
それとも、「ラッキー✌」にしたでしょうか?。
勿論今なら迷いませんよ。僧侶ですから。