多聞院お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
私の散歩のお供は演歌だが、島倉千代子さんもその一人で、『お千代さん』の愛称で呼ばれている。
「泣き節」と評される彼女の歌は、私の感性とマッチしている。
平成25年11月に隠れるまで、日本人の心を掴まえた数々のヒット曲を遺している。
美空ひばりさんと比較されるが、私は断然お千代さん派だ。そもそもタイプが違うので、比較することには無理がある。
最後の歌となったのが「からたちの小径」。
生涯を通しての代表曲である、「からたち日記」を強く意識したタイトルと歌詞内容になっている。
この歌の録音は自宅に録音器材を持ち込んでなされたと言う。
「最後のメッセージを遺す」との気持ちが伝わって、「さすがプロ!」との思いを強くする。
その一方、隠れる3日前の録音なので、声はかすれ、息は続かず苦しそうで、聴く側は切ない気持ちにもなる。
散歩中に聴いているのは、娘がスマホにダウンロードしてくれた、「この世の花」を頭に16曲収納されている全集である。
「辞世の歌」は一番最後に収録されているのだが、何時もイントロで、「聴こうかな?、パスしような?」と迷ったりする。
でも結局は、「切ない気持ちになったとしても、ファンなんだから聴こう」と頑張ることが多い。
一人の人間が自らの命を削って、訴える言葉には重みと説得力がある。
「涙がぽろぽろり」の歌詞が、各節の最後に配置されており、特に曲の最後の「涙がぽろぽろり」は真に迫って、私も自然と胸を熱くする。
この世を去る時、家族や知り合いに教訓(家訓など)や遺言を遺す人と、人を縛る様なことはしないと考える人に分かれると言う。
「誰か世に ながらへて見る 書きとめし
跡は消えせぬ 形見なれども」 紫式部
私はお千代さんの歌を形見として、聴き続けようと思う。
合掌