多聞院お寺の漫画図書館スタッフの諸澤 正俊です。
今年古希のお祝いに、東京都からシルバーパスを貰った。と言ってもタダでは無く、年間2万円程払うのだが、最寄りのバス停から駅迄が高額なので大変助かっている。
乗り物は公共マナーの交差点でもある。
最近自分が杖の世話になっている事もあり、優先席を巡っての人々の動きを見守っている。
私は健常の時、仮に優先席が空いていても近寄らず、立っている事が多かった。座ると「権利と義務」の狭間で揺れて、精神的に疲れてしまうからである。
朝私と同じバスを利用するある男子高校生は、車内に空席が沢山有っても、優先席を指定席のように座る。
健常者とて席が空いていれば座る権利があり、また同時に、優先されるべき人がくれば立つ義務が生ずる。
「この方と私とで、どちらに座る優先権があるだろうか?」と、常に判断を求めらている。
ある日バス内の3つの優先席に、乳母車の若い母親、70歳位の女性、居眠り中の若い女性が座っていた。
そこに足が御不自由で、かつヘルプマークを下げた男性が3人の前に立ったのだが、誰も席を譲らない。私は遠くに座っており、杖を使いながらの車内移動が難しい。
結局彼は手荷物置き場に身をあずけながら、終点まで立っていた。
普通に考えて立つべきは、先ずは居眠り中の女性と思うのだが、目を閉じている。
優先席に座ったら、常に判断を求めらている立場だから、居眠りはアウトかも知れない。
乳母車の母親も子供は車の中なので、ご不自由な方より優先されないかも知れない。
見た目だけでは判断出来ないが、70代のご婦人も彼よりは元気そうである。
外見からでは判らない不自由さもあるので、一概には断ぜらない。だからこそ優先席は、義務と権利と善意の三叉路である。