多聞院お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
皆さんはお母さんへの、最初の贈り物を憶えていますか?。
私に幼い頃の記憶は無いのだが、18歳の6月21日、友人宅の田植えの日当から、病弱の母のために沢山のバナナを買ったことは、鮮明に記憶している。
シンガソングライター中村ブンさんの
『母さんの下駄』は
世界中で一番きらいなものは
かあさんの怒った顔
世界中で一番うれしいのは
かあさんの笑った顔
世界中で一番つらいのは
かあさんの泣いた顔
で始まる。
誌面の都合で概略を紹介します。
主人公は小学校六年生。母親は出かける際に、男物のすり減った下駄を履いて行く。
それが嫌で、毎日貰う食事代の25円から、5円づつタコ糸にとうして貯めて、赤い花織の下駄を買う。
新聞紙に包まれた、新しい下駄を母親に差し出した時、喜んでくれると思いきや、「いくら貧しくても、人さまのものに手をかけるような子に、育てた覚えはない」と、逆に怒られてしまう。
新聞紙に落ちる涙を拭うともせず、お金を貯めて、自分で買ったことを必死に訴える。
やがて母親も気がつき、「悪かったね」と言って、
何度も何度も子供に頭を下げる。
最後に「すまなかったね」と言って、後は言葉にならない。
主人公が最初に見た母親の涙であった。
これは中村ブンさんの実体験である。
私も母親と過ごした18年の間に、幾度となく彼女の涙を見た。
母から引き継いだ命を精一杯生きることが、今の私に出来る、『母への贈り物』かも知れない。
祥月命日の今日、沢山の花を供えながらそんなことを考えた。
令和6年6月22日 南無阿弥陀仏 合掌