多聞院お寺の漫画図書館スタッフの諸澤正俊です。
「高砂や この浦舟に帆をあげて、、、」を聴いて、
これを目出度い謡と思える人は、かなりご年配の方々かも知れない。
出典は能だが、かつては結婚式や祝いの席で謡われていたようだ。
ようだと言うのは、70歳台の私でもこの謡を実際に聞いたのは、1、2度しか無いからである。
古い映画やテレビドラマの、座敷で行われる結婚式で、長老格の人が「高砂やー、、」と声を張り上げる場面は時々お目に掛かる。
今年の春我が家の玄関先で、敷詰めた砂利の間から雑草らしき植物が一本出てきた。
抜き取ろうとしたが、葉がユリに似ている気がして、しばらく様子を見ることにした。
結果、鉄砲型のユリの花が綺麗に咲いた。雑草として刈り取らなくて良かったと安堵したのだが、球根を植えた記憶はないし、私の知っているユリの葉とは違いかなり細い。
色々調べて見ると、品種名は「高砂ユリ」で、台湾からの外来種である。
台湾はかつて、「高砂国」と日本で呼ばれていた時代があり、そこからの命名のようだ。
元々日本は美しいユリの原産国で、山ユリ、鹿子ユリ、笹ユリ、乙女ユリ、鉄砲ユリ等々があり、シーボルトによってヨーロッパに紹介されて、「オリエンタルリリー」として名高い。
ヨーロッパにとって日本の鉄砲ユリは外来種だが、今はキリスト教の儀式に欠かせない花となっている。
ところが前述の高砂ユリは繁殖力が強く、在来種の山ユリの生態系を脅かすとの理由で、嫌われものとなっている。
普通ユリは芽を出してから花が咲くまで5、6年を要すのだが、高砂ユリは小さい根で開花して、沢山の種を生み出す
近い将来「特定外来生物」として、駆除の対象となるようだが、既に駆除を始めた地方地域もある。
猛毒があるならいざ知らず、外から来て繁殖力があるとの理由で、花を駆除の対象にするのには疑問がのこる。
太宰府の「飛び梅」も中国からの外来種で、当時花見と言えば梅が対象であった。