お寺の漫画図書館スタッフの酒井正空です。このコーナーでは漫画図書館の蔵書を紹介していきます。
今回取り上げるのは仏教コミックスシリーズの『宇宙のお経 華厳経』です。このマンガは『華厳経』の中の「入法界品」のエピソードを元に描かれています。善財童子という初心の修行者が文殊菩薩の指導を受け、さとりを求めて先徳の53人の求道者に教えを請う物語です。その教えを請う求道者は菩薩、修行僧、女神、仙人、バラモン、船頭、医者、商人、子供、遊女など様々です。
善財童子が8番目の求道者・毘目瞿沙仙人と出逢う場面は非常に印象的です。善財童子が毘目瞿沙仙人を訪ねたとき、仙人とその待者達は善財童子を最敬礼で迎え入れます。その理由を仙人は「この世のすべての生きものたちの救い主となられるおかた」であるからと善財童子に伝えます。これは仏教で説かれる「一切衆生悉有仏性」(『涅槃経』)、「初発心時便成正覚」(『華厳経』)に基づくものです。私の浅はかな理解ですが、「すべての生きとし生けるものは仏となる因を持っている」、「初めて菩提心を発した時に仏となる」ということは、つまり仏性という「因」に菩提心という「縁」が加われば、初心の菩薩も仏陀という「果」が実るのは自然の道理であるということを説いているのだと思います。
お経も内容もマンガを通せば理解しやすく、仏教の触れるよいきっかけになります。